狂愛で進んで行きます。
苦手な方は、読まずにお帰り下さい。
ここだけはまだソフト。

わたしがそう思い始めたのは、とある誰かの言葉がきっかけだった。 鬼に関することだった。 悪気がないのは分かっていた。 それでも、わたしの思考は少しずつおかしくなっていった。 最後に山南さんに「羅刹の力になってほしい」と言われてから もうそれだけしか見えなくなった。 わたしは、 死が欲しかった。 乱離骨灰【愛】 「千鶴どっちに逃げた!?」 「あっちじゃねぇのか?探せ!!」 わたしは物陰に隠れていた。 なにをしているのかと言えば、脱走だ。 「逃げれば斬る」と言われてもいた。 何度か逃げてみたが、私が殺されることは無かった。 いろいろと探られている間に、あたりの気配が消えた。 そっと様子をみて、大丈夫そうなので走りだす。 その瞬間に気持ち悪さを感じて、後ろを振り返った。 「みーつけた。そこでなにしてるの?」 「・・・沖田、さん。」 震えるような殺気が立ち上がっている。 それでも。 「お願いです。もう嫌なんです・・・・・・」 「しょうがないなぁ。じゃあ足止めさせてもらうよ。」 もの凄い早さで沖田さんは剣を繰り出した。 わたしはかろうじてそれを潜り抜けて走り出す。 もちろん沖田さんは走って追いかけてくる。 隙を見て、とある場所に隠れた。 息を殺せ。気配を殺せ。 「あれえ どこいっちゃったんだろ。」 軽くこほこほと咳をしながら、沖田さんはそのまま歩いていく。 それでは逆に行くことにしよう。 足音をそっと消して、沖田さんが歩いて行った方とは反対側に。 「雪村。」 「・・・。」 「何故逃げようとする。」 「もう 嫌になったんです。行かせてはもらえませんか。」 「それは叶わない。大人しくするのだな。」 斉藤さんが構える。 わたしは腰を落として、ゆっくりと斉藤さんの剣の軌道を読もうとする。 わたしがじり、と足を鳴らせば一撃必殺の一閃。 それを避けきれず、わたしの手首付近に痛みが走る。 その瞬間わたしは、斉藤さんの顔に向かって手を振るった。 「っく」 斉藤さんの目元に向かって、私の血潮が飛ぶ。 血液が顔にかかり、斉藤さんは片目を瞑った。 その隙を見逃さず、わたしは斉藤さんの横を低く姿勢をとって飛び抜けた。 「なっ・・・ 雪村!」 斉藤さんの声が聞こえる。 それを振り切るように、わたしは走った。 裏門付近を飛び出そうとした時に、赤いものが見えた。 背の高い、赤い髪の人。 「・・・・・・千鶴。」 槍を構え、私を待ちかまえていた。 「ここを、通すわけにはいかねぇんだ。」 「・・・原田、さん。」 「俺は、新選組だから。脱走するお前を逃がしておけない。」 後ろには顔を返り血で赤く染めた斉藤さん。 そして、騒ぎを聞いて駆けつけた沖田さん。 「もう、いや・・・」 わたしは首を左右に振る。 後ろでは、鯉口を切る音がする。 きっと二人はいつでも刀を抜くことが出来る。 さすがに3人から逃れられるとは思わない。 目の前の赤い髪の人は、槍を構えるのをやめて、 わたしに手を伸ばした。 「千鶴。こっちに来い。」 わたしは涙を堪えきれなくなって、目からぼろぼろと落とす。 もう嫌。もう無理なの。 ・・・・・・お願い。お願いだから。 後ろで刀を構えている斉藤さんたちを気にせずに。 原田さんの胸の中に飛び込んだ。 「・・・・・・お願い、殺して・・・・・・」 「・・・・・・千鶴・・・・・・」 わたしが欲しい救いは、愛じゃない。 情欲でもない。 闇と、終わりなんです。 「・・・千鶴・・・」 力を抜いて、原田さんの腕に抱かれて。 苦しそうに呟くのを聞いた。
-乱離骨灰-rarikoppai 跡形もなく離れ散ること。こなごなになること。 また、ひどい目にあうこと。立ち直れないような状態になること。 2010.11.06 ■戻る